南島漂流記
2004年4月後
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ヘビトンボの一種
NikonD1X Sigma18-50/3.5-5.6
2004.4.29

 渓流沿いのクマタケランの葉にとまるヘビトンボの一種。恐らくヤンバルヘビトンボという種類でしょう。今の季節、夜の電灯に結構な数が飛来するのを目撃しますが、本来の生息地は、渓流沿いの森の中です。
 渓流環境で見られる理由は、幼虫が渓流の水中に生息しているためです。同じ環境には、カゲロウやトンボの幼虫なども見られます。しかし、ちょっとややこしいのですが、ヘビトンボはアミメカゲロウ科の昆虫です。アミメカゲロウ科の中には、あのアリジゴクの成虫のウスバカゲロウも含まれています。
 つまりヘビトンボは、同じ環境で幼虫が水中生活を送るカゲロウやトンボとは近い関係にはなく、幼虫が陸上生活をするウスバカゲロウやツノトンボと近い関係にあるのです。

2004.4.29

 道路脇のシマアザミに何頭ものジャコウアゲハが群れています。1本のシマアザミの横を車で通過しようとしたとき、2頭のジャコウアゲハがとまっているのが目に入りました。
 「交尾かな?」と思い、車を停め近付いてみると、どうも様子が変です。よく見ると、上にいるジャコアゲハは、シマアザミの花に隠れていたアズチグモに捕まっています。そして、下のジャコウアゲハはというと、長く伸した口吻の先端だけで花に引っ掛かっているのですが、既に死んでいるようで全く動きません。
 どのようにして、このような状況が生まれたのか、最初は解りませんでした。恐らく、まず下のチョウがクモの餌食になり、捕食後放されたのに、偶然口吻が花から外れなかったのでしょう。そして次にやって来たチョウが捕獲された時点で、私が気付いたということのようです。
 数時間後、この場所を訪れてみると、下のチョウは引っ掛かったままで、上のチョウはシマアザミの根元に落ちていました。そして、この花には次から次へとジャコウアゲハが訪花していました。恐らく、花の影にはアズチグモが潜んでいて、次の獲物を狙っていたのでしょう。それとも、満腹で食後の休憩中だったのでしょうか?
 ちょっと残念だったのが、最後まで花とチョウの影に隠れて、このクモがオキナワアズチグモだったのかアマミアズチグモだったのか確認出来なかったことです。それにしても、余程獲物に恵まれて栄養が充分なのでしょう。これ程立派なアズチグモは見たことがないというくらい大きなクモでした。


アズチグモに捕食されるジャコウアゲハ
NikonD1X Sigma105/2.8Macro Speedlight


リュウキュウルリボシカミキリ
NikonD1X Sigma105/2.8Macro speedlight
2004.4.28

 今日は数日ぶりに晴れましたが、気温は低めで、森の中はヒンヤリした感じです。そのような天候の中、沖縄本島最北端に近い森を歩いてみると、意外なほどたくさんの昆虫に出会うことが出来ました。
 特に印象的だったのが、ブドウ科の植物で見られたリュウキュウルリボシカミキリです。小型のカミキリムシですが、コントラストのある模様は、結構目を引きます。これまでは、春から初夏にかけてときおり見掛ける程度の、決して数の多い昆虫のイメージではありませんでした。それが、今日は1本の木に7、8匹もの姿をまとめて見ることが出来たのです。図鑑には、成虫になってからブドウ科の植物を食べると書かれていますが、このような光景を目にしたのは、もちろん初めてのことです。
 これまで珍しいというイメージだった昆虫に一度にたくさん出会えた喜びと、「なぁんだ、いるところにはいるんだ・・」という軽い落胆との両方が入り交じった気分でした。

2004.4.27

 山原(やんばる=沖縄本島北部)の森の環境を代表する渓流ですが、典型的な渓流環境は数少なくなりました。わずかに残された、山原の渓流環境を一年を通して撮影したいと以前から考えているのですが、なかなか実現しません。
 昨日から久しぶりに、テントを持って渓流環境に入ってみました。大型の業務用ビデオも持って、かなり気合いを入れて行ったのですが、散々の結果でした。初めから終わりまで、ほとんど雨に降られてしまいました。
 それでも折角来たのだからと思い、計画どおりに実行したのですが、雨の中のテントの設営、撤収ほど悲惨なものはありません。また、やっと立てたテントの中で何も出来ないのも悔しいものです。おまけに、湿気でビデオカメラが結露してしまい、せめて森の中の降雨でも撮ろうと思ったのですが、それも叶いませんでした。朝方の雨の合間に、行ったことの証拠写真を撮っただけで、また雨の中を戻ってきました・・・


雨に濡れる山原の渓流環境
NikonD1X Sigma18-50/3.5-5.6


オキナワルリチラシ
NikonD1X Nikkor10.5/2.8 Fisheye
2004.4.26

 気温の上昇と共に、蛾の姿が増えてきたように感じます。特に、夜の電灯の周りに集まる蛾の数は、かなりのものです。しかし、そのほとんどは昼間になると、何処かに姿を隠してしまい、夜の光景が嘘のように思えてしまいます。
 一方で、数は少ないですが、昼間に活動する蛾もいます。そのひとつがこのオキナワルリチラシ。翅脈が金属光沢のあるルリ色をしていて、なかなか美しい種類です。そして、チョうと同じように花にやって来て、蜜を吸う姿もよく見られます。夜行性で地味で目立たない蛾というイメージからは、かなり懸け離れた存在と言えるでしょう。
 しかし、このような目立つ姿と行動を採るのは、理由があります。ちょっと捕まえて、刺激を与えると眼の近くからブクブクと泡を吐き出します。この泡が天敵にとっては、不味く不快らしく、目立っていても、簡単には捕食されないらしいのです。
 本来、昼行性のオキナワルリチラシですが、夜の電灯にも飛んできます。このところ、昼も夜も度々姿を見掛けます。ちょうど、今が発生のピークなのでしょう。

2004.4.25

 沖縄本島の最高峰の与那覇岳(503m)の中腹にある森林公園にやって来ました。周囲に伸びる遊歩道のひとつを歩いてみましたが、今ひとつ被写体に恵まれません。途中、渓流が見られたりするのですが、トンボの姿もなく、意外な寂しさです。見掛けるのは、ザトウムシ、ツユムシの幼虫、シリケンイモリ、オキナワオオミズスマシばかりです。
 陽も傾きかけてきたので、そろそろ戻ろうかと思ったときに見つけたのが、この葉の上で寝ているオキナワアオガエルです。この光景は何度か見たことがありますが、いつもユーモラスな雰囲気が漂ってきます。左右の前肢を頭の下にし、何処かふて寝をしているような気がしてしまうのです。

 


オキナワアオガエル
NikonD1X Sigma105/2.8Macro Speedlight


カエンボクの花
NikonD1X Sigma18-50/3.5-5.6 PL-Filter
2004.4.22

 沖縄では、県の花に指定されているデイゴの花の季節です。遠目には、ちょっとそれに似た木が、このカエンボク。デイゴよりもさらに高く生長し、花がオレンジ色で、緑色の葉とのコトンラストが映える印象です。
 このカエンボク、イペーカエンカズラと同じノウゼンカズラ科の植物です。カエンカズラは名前こそ似ていますが、つる性のイメージですから、この高木のカエンボクと同じ科というのは、意外な印象を受けます。
 イペーとの関連性はと言うと、遠目に見ているのと近くで観察するのとでは、花の造りが違うことでしょうか?カエンボクは、オレンジ色の大輪の花が大きく開いているのだと思ってましたが、近くで見ると、大輪には違いありませんが、沢山の花がひしめき合っていて、やや控え目に開いている感じです。このような開き具合から、アフリカンチューリップの別名もあるそうです。

2004.4.21

 昨日、琉球大学の構内で、ミツバチの分封集団が見られるというので、早速撮影に飛んで行きました。分封とは、新しい巣を造るために古い巣から離れて移動することで、度々、移動途中でこのような大集団が見られます。
 果たして、どれくらいの個体数なのでしょうか?数千?あるいは万の単位でしょうか?とても迫力のある被写体なので、しっかりと記録したかったのですが、枝の隙間から最も集団がよく見えるアングルだと、真後ろから太陽が降り注ぎ、完全な逆光になってしまいます。自然光だけで露出補正をかけると背景が真っ白に飛んでします状況です。ストロボを焚くと露出は合いますが、このようにかなりコントラストの強い映像となってしまいます。
 そこで今朝再び出直して、よい光線状態で撮影しようとしたのですが、同じ場所に行ってみると、既に20頭くらいを残して別の場所へ移動していました・・・


セイヨウミツバチ分封集団
NikonD1X Nikkor70-300/4-5.6ED Speedlight


ハガタベニコケガ
NikonD1X Sigma180/3.5Macro X1.4Telecon Speedlight
2004.4.19

 急に気温が高くなったのと月が暗いことが重なって、夜の電灯にはたくさんの昆虫が飛来します。その主役は、蛾と甲虫の仲間でしょう。蛾の仲間は、大きなものから小さなもの、地味なものから派手なものまで、実にバラエティに富んでいます。
 一般にはチョウのほうがポピュラーな身近な存在ですが、同じグループに属するガのほうが一桁多いくらいですから、そのバラエティの幅はかなりのものです。以前は「鱗翅目(りんしもく)」と呼ばれていたチョウとガですが、現在は「チョウ目」と呼ばれるのが普通になりました。しかし、その割合からすれば「ガ目」と呼ぶほうが実状に合っているように思われます。数日前のニュースで、「ヒト」がこれまでの「霊長目」ではなく「サル目」に変更されることへの抵抗感、異議が紹介されていましたが、これは反対に実状を反映した名称と言えるでしょう。
 話は脱線してしまいましたが、今の季節、灯火にやって来るガの中でちょっと気になるのが、このハガタベニコケガ。肉眼で見ると、この歯形に例えられるラインがもっと緑色がかって見え、もっと無気味な、おどろしい印象を受けるのですが、写真に撮るといつも黒っぽくなってしまって、ちょっと印象が違ってしまうのです・・・もう1種類、アカスジシロコケガというガも同時によく見られます。こちらは白地に鮮やかな赤色のラインが走り、なかなか美しい存在です。この2種のコケガ、見た目の印象は正反対ですが、どちらも沖縄から北海道まで分布し、幼虫は地衣類を食べるという共通点もあります。

2004.4.18

 今日は、自然界を離れて、沖縄固有種のコンクリート製ソニー坊やの再生プロジェクトの一日でした。このソニー坊や、今から40数年前に県内に10体が設置されたものですが、現在はその半数の5体まで減少し、絶滅が危惧されています。そこで、有志でこれ以上数を減らさないように、現存するものの劣化を防ぎ、少しでも良い状態で残すために、再塗装作業を行っているものです。昨年9月には、糸満市名城ビーチのもの再塗装しました。
 今回の再生物件は、具志川市のもの。オリジナルの状態では、黄色いトレーナー(セーター?)が白色に塗装されていたり、鼻が欠けているなどの特徴がありますが、それをオリジナルになるべく近い状態に戻そうという主旨です。
 午前11時から作業を始め、のべ6人(プラス応援団3人)で交代しながら、午後6時には何とか完成しました。他のソニー坊やよりも台座が低くいのですが、背後のフェンスとの空間がほとんどなく、その点が作業上の最大のネックでした。
 作業の途中には、日曜日にもかかわらず市役所の方が、取材や激奨に来てくださったり、完成直後には近くにお住まいの方にも絶賛して頂き、嬉しい限りでした。これでしばらくは、皆さんに元気な姿を見て貰えることでしょう。
※設置後姿を消してしまったソニー坊やの行方がひとつ判明しました。「週刊レキオ」の過去の記事によると、沖縄市の北美小学校前にあったそうです。これで設置場所が未だ不明なのは、残り3体です。


再塗装した具志川市のソニー坊や
NikonD1X Sigma18-50/3.5-5.6 PL-Filter


ソウシジュに訪花したキムネカミキリモドキ
NikonD1X Sigma105/2.8Macro Speedlight
2004.4.17

 あちらこちらで、ソウシジュの鮮やかな黄色が目に付くようになってきました。直径1cm足らずの球形の花が無数に着いた木は、遠くからもよく目立ちます。そして、葉の深緑色とのコントラストは青空によく映えます。
 なかなか魅力的な植物ですが、在来種ではなく、台湾などからの移入種だそうです。在来種ではありませんが、沖縄の昆虫に結構人気があります。例えば、このキムネカミキリモドキ。次から次へと飛来して、花から花へと動き回ります。そのほとんどが後脚の付根(腿節)が肥大した雄です。雄どうしはこの部分を使って闘うそうですが、未だにそのシーンを見たことはありません。
 ソウシジュの魅力に負けて、一度だけ一枝折って部屋に活けてみたことがあります。ところが、その香りはというと、決して長時間締切った部屋にいっしょにいたいとは思えないものでした。やはり野におけ蓮華草・・・?
※当初、種名をフタイロカミキリモドキと間違っていました。

2004.4.16

 山原(やんばる=沖縄本島北部)の森でも、やはり春から初夏に季節が変わろうとしています。昼間の森でも、春先の昆虫とは違った種が活動し始めていますし、夜の照明に集まる昆虫の数も、かなりものです。
 照明に飛来した昆虫の中に、久しぶり出会う希少種がいました。1991年環境庁版レッドデータブックにも載っているベニツチカメムシです。本州の一部と九州本土に生息していますが、それより南では、一気に飛び離れて沖縄本島北部だけで見られます。
 その沖縄本島北部・山原での出現はかなり奇妙なものです。1964年に1匹だけ採集された後、しばらく現れませんでした。それが、80年に久しぶりに数匹採集された翌年、ダム工事現場のサーチライトに一晩で数千匹が飛来したのです。しかし、その後また姿を暗まし、80年代後半から年に数匹程度目撃される状況が続いていました。また、九州などでは親虫が幼虫に餌のボロボロノキの実を運ぶ行動が観察されているのに、沖縄では未だ幼虫が確認されていません。
 さて、そのような希少状態だったベニツチカメムシが、何とこの晩だけで3匹もいたのです!「これは一大事!!」と、かつての勤務先の琉球大学資料館に電話を入れたところ、「今年は20数年ぶりの大発生のようですね」とのこと・・・なる程、またまた2匹を見つけることが出来ました・・・


ベニツチカメムシ
NikonD1X Sigma105/2.8Macro Speedlight

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