南島漂流記
2004年3月前
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ヒメユズリハの花
NikonD1X Sigma105/2.8 Macro Speedlight
2004.3.14

 山原(やんばる=沖縄本島北部)からの帰り際に立ち寄ったダム公園で、小さな発見がありました。ヒメユズリハが沢山の花を着けていました。ユズリハと言えば、お正月の神事などに使われることや、鮮やかな赤い葉柄が印象にありますが、花を見たのはこれが初めてです。
 なんて表現したらよいのか、ちょっと不思議な造りです。ひとつひとつの花の形は、まるで子供の描く絵のようです。しかし、柔らかな花弁もなく、雄しべや雌しべも見当たらない、何処か造り物のようにも思えます。それとも、これからさらに形が変化するのでしょうか?時間が出来たら、もう一度確認しに行きたいと思います。
 さて、一般に写真やビデオの撮影で重要な条件は、晴れか曇りか雨かなどの天気だと思われがちです。しかし、この何れであっても、それぞれの天気に相応しい撮影の仕方があります。実際の撮影で、特に小さい被写体を相手にする場合、一番困るのは風なのです。夕暮れの風の中、揺れのなかなか収まらないヒメユズリハの花を鮮明に写し止めるのは、思いのほか厄介な作業でした。

2004.3.14

 3日間、山原(やんばる=沖縄本島北部)にいましたが、結局ほとんど晴れ間には恵まれませんでした。それでも、今週のTV用の素材集めのために、小雨の合間をぬって、春を感じさせる植物を探しては、撮影してきました。午後には、雨も頻繁になり光量も落ちてきたので、帰路についた直後、車の前を横切ったのがこのコノハチョウです。
 今年に入り、既に2月末にコノハチョウの成虫を目撃しています。しかし、その日は好天で気温も高く、活動的だったので、ほんの一瞬目にしただけで姿を消してしまいました。皮肉なことに、3月中旬の今日は、薄暗い小雨模様で余り活動的ではありません。そのために、今年初めて、ゆっくりとレンズを向けることが出来ました。足場の悪い斜面で、光量も不充分と決して恵まれた撮影条件ではありませんでしたが、ブレ補正レンズに助けられて、鮮明な画像が得られました。どうも最近、このレンズに頼ることが多いようです。
 さて、このコノハチョウ、破れもなく、翅の前端と後端が反り返っているところから、羽化間もないと思われます。成虫越冬するコノハチョウですが、いよいよ本格的な活動期に入ったようです。今年は、コノハチョウをテーマにした撮影を予定していますが、これからどのようなカットが撮れるでしょうか?


コノハチョウ
NikonD1X VR Nikkor80-400/4.5-5.6ED


ハサミムシの一種
NikonD1X Sigma105/2.8 Macro Speedlight
2004.3.13

 久しぶりの山原(やんばる=沖縄本島北部)はすっかり春本番なのですが、生憎の天気のためか、昆虫の活動は低調です。いつもであれば、昆虫のよく飛来するシマイズセンリョウ、ハクサンボク、トベラなどの花を探しても、ほとんど昆虫の姿はありません。
 そのような状況でやっと見つけたのが、このハサミムシの仲間。小雨降る夜に、ハクサンボクの花でのことです。雄しべの葯(やく)に口吻を付けていますから、花粉を食べているのでしょう。この写真のハサミムシの種名は判りませんが、ハサミムシの仲間と言えば、昆虫食のイメージがあります。ですから、このように植物食のシーンは珍しく思い、雨の中撮影してみました。尤も、植物食の昆虫に限らず、雑食性の昆虫でも、しばしば花粉を食べるシーンに出会います。植物の中でも、花粉はきっと栄養に富んだご馳走なのでしょう。
 これまでハサミムシに抱いていたイメージは、尾端のハサミや捕食性などの性質から、どちらかと言うと獰猛なものでした。しかし、花にやって来た、黒い円らな瞳(?)の主は、ちょっとこれまでのイメージとは違うものでした。
※その後の調べでは、スジハサミムシの幼虫のようです。

2004.3.13

 気温も上がり、夜間、電燈に飛んで来る昆虫の数も明らかに増えてきました。昨夜から今朝にかけて見た、灯火飛来昆虫の中で最も大きかったのが、このオオトモエ。夜だけでなく昼間も見かける、結構ポピュラーなガの仲間です。ところで、このオオトモエの姿を見る度に不思議に思うことがあります。
 前翅と後翅の後端の少し内側にある不思議な模様です。どちらもまるで千切れたような凹凸模様、しかもご丁寧に陰影まであって立体的に見え、まるでだまし絵のようです。この模様は、一体どのような意味があるのでしょうか?実際の体の大きさよりも小さく見える効果があると思うのですが、動物の世界では相手に自分の体を出来るだけ大きく見せようとするテクニックはいろいろと発達していますが、逆に小さく見せる利点は何処にあるのでしょうか?かと言って、体の存在を背景に埋没させてしまう分断模様とも違うようです。
 前翅中央の大きな偽の目玉模様も、ちょっと気になります。普段は隠しておいて、急に見せて相手を驚かせる大きなものでも、小さな何時も見せておく囮の攻撃目標でもない、大型でいつも見えている目玉模様。尤も、このような目玉模様は、イボタガやヤママユガ科などでもありますから、これはよしとしましょうか。
 一見、カムフラージュや威嚇などの防衛行動を思わせる模様を持ちながら、具体的にどう解釈してよいのか解らない不思議なアレンジなのです。


オオトモエ
NikonD1X Sigma18-50/3.5-5.6 Speedlight


コモウセンゴケ
NikonD1X Nikkor10.5/2.8 Fisheye Speedlight
2004.3.12

 免許の更新、確定申告などをクリアして、2週間ぶりの山原(やんばる=沖縄本島北部)です。久しぶりの山原は、すっかり新緑の季節を迎え、春の花があちらこちらに咲いています。
 春の花として取り上げるのには、ちょっとイメージが違うかもしれませんが、目に止まったのがこの食虫植物のコモウセンゴケ。崖などに貼り付くように生えている地味な存在ですが、今の季節、鮮やかな赤色がよく目立ちます。さらに近付いてみると、放射状に広がった葉の中心から細長い茎が伸び、先端にたくさんの蕾を着けています。中には、既に小さな白い花が見られる株もありますが、開花のピークはもう少し先のようです。
 食虫植物というとちょっと獰猛なイメージを抱くかもしれませんが、粘着質の葉に獲物が捕らえられていることは稀です。ときおり、小さなハエやカが見られる程度です。食虫植物と言っても、主な栄養は根から得て、捕らえた昆虫からの栄養は補助的なもののようです。実際はとても粘着性の高い葉なのですが、本来の目的のためには余り機能していないようです。それよりも、枯枝や枯葉をたくさん捕らえていて、撮影のためにそれを取り除くに、いつも苦労します・・・

2004.3.11

 ブーゲンビリアといえば、ハイビスカスと並んで、沖縄でよく目にする園芸植物でしょう。ハイビスカス程ではありませんが、ピンク、赤、オレンジ、白などのバリエーションが見られます。
 熱帯、亜熱帯の植物がたくさん輸入され、鮮やかで目を引く園芸植物はたくさんありますが、その華やかさは期間限定のものがほとんどです。けれど、このブーゲンビリアは一年中楽しませてくれますし、まとめて植わっていると、より華やかなイメージになります。
 とてもポピュラーな植物になっていますから、ご存知の方も多いと思いますが、通常花だと思われているところは、実は蕚(がく)なんですよね。本当の花は、その鮮やかな顎の中に見えている、クリーム色のロート状のかなり小さな存在なんです。


ブーゲンビリア
NikonD1X VR Nikkor80-400/4.5-5.6ED PL -Filter


イペーの花
NikonD1X VR Nikkor80-400/4.5-5.6ED PL-Filter
2004.3.10

 今日も気持ちのよい青空が広がっています。そんな青空によく映えるのが、このイペーの黄色い花。この1週間程で、急に目にするようになってきました。補色関係なので目立つということもありますが、この大振りなクシャクシャ、フワフワした花の雰囲気が、春の麗らかさに合っていて、何処か気分が軽くなるような気がします。
 数日前から、澄んだ青空バックに撮影をしようしようと思いながら、なかなかタイミングが合いませんでした。今日も、雲の少ないことを確認して事務所を出たのですが、建物の影になって巧く陽が当ってなかったり、一番見映えのする花が電線と重なってしまったり、撮影地点が交通量の多い道路のカーブで思ったアングルが得られないなど、スムースに事は運びませんでした。
 それでも、車の合間を縫って、手ブレ補正レンズの手持ちで何とか撮影することが出来ました。ファインダーを覗いてみて、これまでとちょっと印象が違ったのが、花の造り。昔あったような黄色いティッシュペーパーをクシャクシャに丸めたようなイメージだったのが、このようにロート状の花が集合しているのが意外でした。
 南米原産で、他にも花の色のバリエーションがありますが、この色が最もポピュラーなようです。「イペー」が標準的な名称ですが、沖縄では、方言で「とっても」「たくさん」を意味する「イッペー」と書かれたり、呼ばれてたりすることも少なくありません。

2004.3.9

 今日はなかなか魅力的な青空が広がっています。ですが、いろいろ用事が重なり、ゆっくりと撮影に出ることが出来ません。食事に出た帰りに、いつもの散歩コースの琉球大学に寄ってみました。
 まだまばらな芝生の中に、2株だけですが、ナンゴクネジバナが花を着けているのを見つけ、ちょっと明るい気分になりました。春の典型的な花ということもありますが、とても好きな花のひとつなのです。
 こんなに小さいのに、ひとつひとつの花はちゃんとランの形をしています。それにその小さな花が螺旋状に咲いていくのです。誰がこんなことを考え付いたのでしょう?地球上に存在する生き物は自然選択(淘汰)の結果なのは解りますが、こんなデザインの生き物を見ていると、本当にそれだけなのだろうかと思ってしまいます。それに、花の先端の紅色も、なかなか憎いワンポイントです。
※この写真をご覧頂いた方から、右巻きと左巻きが1本ずつ並んでいるとメールを頂戴しました。確かにそうですね〜!気付きませんでした・・・


ナンゴクネジバナ
NikonD1X Sigma105/2.8 Macro Speedlight


カラシナとダイコンの花
NikonD1X Sigma18-50/3.5-5.6 PL-Filter
2004.3.7

 朝は厚い雲に覆われていた空ですが、午後からはときどき陽が顔をのぞかせるようになりました。まだ青空が広がる程の回復ではありません。
 ときどき射す薄日に照らされて鮮やかな黄色が、あちらこちらの畑や庭で目立ちます。一般的には菜の花ですが、これまでにも紹介してきたように、沖縄の場合はほとんどがカラシナの花のです。車を運転していても、ときどき鮮やかな黄色い塊が目に飛び込んできて、ハッとします。ところが、車を停めてレンズを向けてみても、ファインダー全体が黄色に占領されてしまい、イマイチ魅力的な画面構成になりません。もっと大きな画像で、細部まで見せられるのならば別ですが、どうも単調な画像になってしまいそうです。
 ところが、今日見た光景は、比較的広い畑のほとんどがダイコンの白い花に占められていて、隅のほうにカラシナの黄色い花がかたまって見られます。ちょっとしたコントラストが魅力的で、薄日が射すのを待って数枚のシャッターを切りました。薄日が射すと、それまで何処かに隠れていたモンシロチョウが、数10頭もまとまって舞います。しかし、そのほとんどが白いダイコンの花の上を舞い、カラシナにはほとんどやって来ません。そのために、実際には写っているにもかかわらず、全く識別できない結果となってしまいました。

2004.3.7

 昨夜までは晴れの予報が出ていたのですが、いざ明けてみると、今日も相変わらずの曇天です。1週間前から、晴れ間が出たら、2月29日に紹介したビロードボタンヅルの実を青空バックで撮影しに行きたいと思っているのですが、なかなかままなりません。
 そこで今日もいつもの散歩コースを歩くことにしたのですが、こういう天気ですとどうも地味な物に目を向ける傾向があります。綺麗なものは、より綺麗に撮るために好天の日に残しておこうという心理でしょうか?
 そんな目線で歩いていたら視覚に飛び込んできたのが、このサルスベリの実の塊です。サルスベリと言えば、和名の由来でもあるツルツルの幹と、ピンクや白や薄紫の花が印象的です。しかし、その花の後にこのような実が出来ることなどほとんど記憶にありませんでした。弾けた実の中にはまだ種子が残っていて、枝を揺すると風に舞うように散っていきます。曇天の寒風の中で出会った小さな発見でした。


サルスベリの実
NikonD1X Sigma105/2.8 Macro Speedlight


サシバ
NikonD1X Nikkor70-300/4-5.6ED X1.4Telecon
2004.3.6

 また寒い曇天に逆戻りです。今日は三寒四温の「三寒」のほうのようです。そんな寒空の下、ホルトノキにとまるサシバを見つけました。
 このホルトノキの下には小さな川が流れていて、その土手に出没する獲物を狙う格好の場所のようでした。さらに近くには道路もあり、ときどき車が行き来するのですが、ほとんど気にせずに獲物狙い没頭している様子でした。恐らく、これから北の地方に渡っていくための栄養補給に余念がないのでしょう。
 サシバは沖縄で最も身近に見られる猛禽類です。しかし、その姿を見ていると必ずしも一般的なイメージとは、異なる面もあります。まず、獲物というと小鳥や小型の哺乳類を思い浮かべますが、ネズミは捕食するようですが、意外にも大型のバッタなど昆虫を食べているシーンにしばしば遭遇します。また、暖かい時期は本州などで繁殖し、冬は東南アジア方面に渡りをすると言われてますが、東南アジアまで移動せずに沖縄で越冬するサシバもかなりの数に上ります。
 ところでこのサシバ、北への渡りの準備をしながらも、暖かくなったり寒くなったりで、旅立ちのタイミングを計りかねているのかもしれません。 

2004.3.5

 今日は1週間ぶりの快晴の一日。昼間の青空も夜の星空も久しぶりのような気がします。1月下旬から約1カ月間、ハナサキガエルの産卵行動を追っかけていましたが、その待ちに待った産卵の行われたのが、ほぼ新月の晩でした。そして、今晩久しぶりに晴れ上がった夜空にはほとんど満月に近い月が輝いています。既に、産卵の晩から半月が経ったことになります。まだつい最近のことのように思っていたのですが、早いものです。
 一般的に、春先の気温の変化を三寒四温と表現しますが、生き物達の活動は一気に活発化します。これまで、寒い季節に被写体探しに苦労していたのが嘘のように、撮影したいものだらけとなります。この時期は、天気がよければすぐにでもフィールドに出掛けて行きたい衝動にかられるのですが、なかなか巧くはいきません。フリーランスの身とはいえ、確定申告など年度末の忙しさが重なってしまいます。
 次に心に余裕をもって空を見上げたときは、痩せた月になっているかもしれません。


ほぼ満月
NikonD1X Sigma500/4.5 X2Telecon


シマグワの雌花
NikonD1X Sigma18-50/3.5-5.6 PL-Filter
2004.3.4

 昨日に続いてのシマグワの花です。今日の午前中、改めて花を観察したところ、昨日撮影したものは、雄株の雄花とその蕾のようでした。顆粒状と房状の中間の状態も見つかり、さらに隣の株を見ると、こちらには正に桑の実をダイエットしたような花がたくさん着いているではありませんか。つまり、今日の写真が雌花のようです。
 これでシマグワの雄花と雌花の区別がつき、すっきりしたのですが、図鑑に書かれている雌雄異花同株というものも是非見てみたくなりました。どのような状態で、同じ株に雄花と雌花が並んでいるのでしょうか?
 九州南部からインド東部に分布するものをシマグワと分ける場合と、朝鮮半島から日本本土で見られるヤマグワと同種とする見解もあるそうです。別種であっても、両種は極めて近縁に当る訳ですが、東京の高尾山辺りでは、ヤマグワの花は5月初旬頃に見られるそうです。従って、沖縄では約2カ月早い開花ということになります。
 4日ぶりに晴れ間が戻ってきました。しかし気温のほうはまだまだ低く、今日の撮影でも、風が止むのを待っている間の寒かったこと!

2004.3.3

 寒く天候が芳しくなくても、植物たちを見ていると、着実に春に向かいつつあります。2月13日に、シマグワの芽吹きを紹介しましたが、もう若葉もかなり展開しています。そして、花がかなり目立つようになりました。
 風媒花だけあって地味な花なのですが、撮影していて、花の形の違いが気になりました。花柄の先に顆粒状のものが着いているのと、房状のものが着いているのと2タイプあります。雄花と雌花の違いなのか、あるいは顆粒状が開いて房状になるのでしょうか?後者であれば、その中間の状態があるはずだと思い、探してみたのですが、これだと思えるものも見当たりません。結局、肌寒さと雨にめげて、早々に引き上げてきてしまいました。事務所に戻って図鑑を見れば判るだろうと・・・
 ところが、図鑑を開いてより混乱してしまいました。「雌雄異株だが、雌雄異花同株も見られる」とあります。生憎、雄花と雌花が両方とも載っている図鑑も手許にはありません。
 外はまだ雨が降り続いていますし、そろそろ薄暗くなってきました。明日また改めて確認しに行こうと思います。あるいは、これをご覧になった親切な方が教えてくださるかもしれません。


シマグワの花
NikonD1X Sigma105/2.8 Macro


花弁の散ったカンヒザクラ
NikonD1X Sigma105/2.8 Macro
2004.3.3

 このまま一気に暖かくなるのかと思っていたら、また寒い日が戻ってきました。さらに一昨日からは、それに雨まで加わり、すっかり冬へ逆戻りです。まぁ、これも三寒四温の一部なのだと思いますが、せっかくの桃の節句は、もう少し麗らかな天気であって欲しかったと思います。
 肌寒い中、いつもの散歩コースの琉球大学の構内へ足を運んでみました。キャンパス内のカンヒザクラは、もうほとんどが葉桜になっていますが、よく探すと少し花の残っている株も見受けられます。ですが、残っている花に、あの満開の頃の華やかさを求めるのは可哀想というものです。それよりも意外な美しさを感じさせてくれたのが、この花弁の散った直後の状態です。鮮紅色の顎(がく)と雄しべが、ちょっとした花のように見えます。
 しかしこの姿を見せてくれるのも、ほんの一瞬で、間もなくサクランボへと変身することでしょう。早い株では、若葉の間から緑色のサクランボがたくさん顔をのぞかせているものもありますから。

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